部門全体

基礎学力を高める方策

現在の学生は昔から較べると学力が低下していることは大学教師の共通の認識になっている(西森 1997)。そこで,「基礎学力を高める」ということの狙いは何かというと,授業内容を理解するのに必要な基礎的な学力を完全には前提としないで,その部 分も教育していくことによって,授業を理解する力を付けようとするのである。基本的にはやさしいことから始め,概念をていねいに説明し,問題をこまめに解 かせるなど,いわば高校以下のやりかたをいくらか導入するのである。
ここには,まずどういう問題があるかという回答を集め,次に学生の資質を考慮するという回答を示した。さらに,授業における工夫,小テストにおける工 夫,演習における工夫,宿題・レポートを課すこと,フィードバックすることなどをまとめた。できるまで再試験を繰り返すなど試験における工夫,その他自由 参加の補習・演習という方法もある。

 (d.1)問題点

基礎学力がない,履修内容に差があるなどの問題や授業時間が足りないという回答がある。

(d.1.1)高校との接続の問題点(3)

■基礎学力がないことは困っていますが,どのように克服できるかわかりません。高校までの問題だと思う。
■高校の先生と会う機会に,大学から見た問題点(公式丸暗記,適用主義)を伝えて,協力を求めている。
■高校で数 III,C など履修しない又はしても力を入れなかった者が 2 ~ 3 割もいて,基礎学力の段差は困った点となっている。
これに授業の終わりに与える小課題は,どちらにも刺激を与える問題(2,3割の方の学生には大分難しいようでもあったが)となったようで基礎学力を高めるに役立ったと思われる。

(d.1.2)時間が少なすぎる(2)

■微積分が理,工,医で週一回では十分にできない。
■先日,『教育実習』の研究授業を参観したら,『2次関数』(ページ数50)を50時間かけて教える教案(1年生)を見せられた。大学では,半年15回 (90*15=高校流に直すと30時間)で,微分,積分,偏微分etcをやろうとしている。しかも学生は予習,復習をやらない。悲観的にならざるを得な い。『毎週一回の講義』というパターンをやめて『週二回』(予習,復習をやらなければついていけないし,やればついていける)というような新しいやり方を しなければ,基礎学力の向上は望めないのでは?と思っている。
(d.2)学生の資質

新入生のレベルに合わせてカリキュラムをつくる必要があり,社会人や帰国子女にもそれなりの対応が必要である。付加価値をつけることが教育の目標であるから,学生の学力が低下していてもかまわないという考え方もある。

(d.2.1)接続を工夫する(3)

■高校段階でのレベル低下がある以上無理。大学がソフトランディングを考えるべきである。
■高校のカリキュラムを引き継ぐ形で,飛躍のない大学のカリキュラムを作成していくべきである。
■数IIIの復習から始めることにより,多変数微積分の理解をしやすいようにした。

(d.2.2)社会人・帰国子女についての工夫(1)

■私の勤務する大学は最近社会人入学の学生や帰国子女の学生が増えています。特に社会人では,数年前~10数年前に数学をやった記憶があるという学生です ので,授業以外に,これらの学生を対象として高校1年程度から数学をやりなおす補習の時間を設けてやったことがあります。

(d.2.3)付加価値を付ける(1)

■学力がないことは問題ではない。
(終了後の力)-(開始時の力)
が最大になるべく,教員も学生も努力している。
(d.3)授業

授業に関する工夫としては,内容のくふう,授業中の工夫がある。内容をやさしくしたり,学問の魅力を伝える努力をしたり,問題の解答をていねいに行うという方法がある。基礎学力を高めるにはまず理解しやすい状況をつくることがポイントである。

(d.3.1)授業内容の工夫(3)

■内容を精選して講義は短時間ですませ,演習に時間の多くを割いている。
■証明の省略をしない。自分の理解していないことは話さない。
■レポートの計算のデータを医,薬のデータからとり薬効や血圧等の問題にするようにしている。興味のないデータの処理よりも反応は良い。

(d.3.2)授業中の工夫(2)

■授業中,可能な限り学生に質問し,応答することを要求する。
■公式は何度も繰り返し板書し,ノートを取らせる。自然に覚えるように工夫している。

(d.3.3)内容をやさしくする(2)

■やさしい内容から授業を始める。TAを使っている。
■学生の学力や質に応じてどんどんやさしいことを授業すれば良いと思う。やさしい事柄だといって研究者としてはずかしいことではありません。

(d.3.4)学問の魅力などを話す(2)

■講義の中の雑談(本当はそうではないのだが)で,学問は本来自発的である,etc を話す。
■すべて“自主性”が必要なものでしょう。ではどうしたら“自主性”が育つか。これは百人百様でこれといった決め手はないと思います。(百人百様だからこ そ,“自主性”だとも言えます)。「視聴覚教育」等の「工夫」により一時的に興味を引き付けたからといって大して役に立ちそうに思えません。結局,学問の 楽しさ,難しさ,素晴らしい点,役立つ点等を伝え続け,学生がそれを“自主的”に受け止め,そして進んで来てくれるのを“待つ”しかないと思います。

(d.3.5)概念の説明(2)

■概念の意味を丁寧に一緒に考える。
■機会があるごとに授業のその時の面で基礎概念,性質についていろいろな説明を行う。

(d.3.6)問題の解答の説明(2)

■問題の解答もそこで用いられる性質の説明を行って解答のプロセスが理解できるように心掛けている。
■再受講生に対しては希望により口頭試問を行い,基本的事項に関する易しい問題を説明しつつ解かせている。
(d.4)小テスト

小テストをひんぱんに行って問題を少しずつ解く習慣をつけることもよい。

(d.4.1)小テストを行う(5)

■小テストを実施する。
■演習の時間に小テストを2~3週間に1回実施している。
■演習の時間に毎回小テストをします。演習のない科目についても,少ない範囲で少しづつ小テストをします。
■始めに前時内容に関する小テスト(2問程度,15~20分)を行っています。
■毎回,簡単なテスト(10~15分)を行うとよいと思うが,たいへん手間がかかりなかなか実行できない。

(d.4.2)小テストにおける工夫(2)

■小テストを出来るだけ多く行い,成績の良い学生は期末テストの受験を免除している。また小テストを行ったときは,必ず次の時間には採点結果を返している。
■クラスによっては授業開始後5分間豆テスト(前回分の簡単な復習を兼ねている)を実行し,答案を交換させ,模擬解答をしてみせ,学生に採点させ回収する。
(d.5)演習

演習でやさしい問題を解かせるのも小テストの場合と同じ発想である。場合に応じて使い分ければよい。

(d.5.1)演習を行う(5)

■毎回の演習による。
■演習(とくにやさしいもの)をこまめに行う。
■授業の始まり20分程度は演習に充てる。
■内容を精選して講義は短時間ですませ,演習に時間の多くを割いている。
■平易で練習問題の多いテキストを使用し,基本的な問題を指定して自習を促す。講義中にもできるだけ演習に時間を割く。

(d.5.2)演習における工夫(3)

■学生同士で教え合いながら,問題を解くようにし,全員が出来るようになるまで個人指導を行う。
■演習問題は家で解いて来て,講義開始前に黒板に書かせ,必ず発表者と discussion してみせる。多くの場合再度修正させることになる。(時間が足りない!!)
■高校で数 III,C など履修しない又はしても力を入れなかった者が 2 ~ 3 割もいて,基礎学力の段差は困った点となっている。
これに授業の終わりに与える小課題は,どちらにも刺激を与える問題(2,3割の方の学生には大分難しいようでもあったが)となったようで基礎学力を高めるに役立ったと思われる。

(d.5.3)自分で解かせる(2)

■1年次,2年次ばかりでなく,3年次の数学の講義にも全て演習を付けて基礎学力の養成と,自分で解決する力を付けさせるように努めている。
■毎時間の演習では全学生がプリント問題を解くという作業を行う。確実に自分で問題を解くということに参加する。そして,この演習のフィード・バックを出来るだけ確実にしてやるために次回返却(解答付)。

(d.5.4)自分で解決する喜び(1)

■基本問題に限定して,問題演習を課し,自分で解決する喜びを味わってもらう。
(d.6)宿題など

宿題も問題を解かせるという手段の一つの形である

(d.6.1)宿題・レポートを課す(2)

■毎回少量の宿題を出す。学生は喜んでやっていると受け止めている。
■レポートを毎回課すことと,時間があれば時間内でレポートをさせることで少しは改善された。
レポートの計算のデータを医,薬のデータからとり薬効や血圧等の問題にするようにしている。興味のないデータの処理よりも反応は良い。

(d.6.2)テキスト・演習書の活用(4)

■テキストを指定し,各単元終了ごとに,その演習問題のなかから小テストを行っている。
■平易で練習問題の多いテキストを使用し,基本的な問題を指定して自習を促す。講義中にもできるだけ演習に時間を割く。
■教科書,演習書の2冊を採用し,演習書で自習させる。
(d.7)フィードバック

問題を解かせるだけでなく,フィードバックすることも大事である。

(d.7.1)小テスト・演習の採点返却(2)

■小テストを出来るだけ多く行い,成績の良い学生は期末テストの受験を免除している。また小テストを行ったときは,必ず次の時間には採点結果を返している。
■毎時間の演習では全学生がプリント問題を解くという作業を行う。確実に自分で問題を解くということに参加する。そして,この演習のフィード・バックを出来るだけ確実にしてやるために次回返却(解答付)。

(d.7.2)受講生の意見の把握(1)

■プリントしたレポート用紙の下段に,質問,要望,感想が書ける「コメント・コーナー」を設けて,受講生の意見を把握し,授業に活用していく。
(d.8)試験

試験のできが悪いときには,可能ならば再試験をして安易には単位を出さないと,効果がある。

(d.8.1)試験での工夫(2)

■テストの回数を増やす。
■中間,期末試験の実施と (A-II) で述べたアフターケア。

(d.8.2)できるまで単位をださない(2)

■1年間の範囲のうち4~5個程度最低限できてほしい。基本的問題をくりかえし出題する。それについては単位保留で(できるようになるまで)補講を行う。
■必要なレベルに達していない人達には単位を出さないことで,解決できないでしょうか?私の授業の場合,期末試験で半数以上が不合格になるときには,再試験を1~2回やると,最終的に8割以上の人がしっかりした学力を身につけます。
(d.9)その他

自由参加の補習を行うことも考えられる。

(d.9.1)自由参加の補習・演習(1)

■自由参加の補習や演習を週1コマ実施。熱心に参加したものはそれなりにの効果がみられるように思う。

(d.9.2)TA を使う(1)

■やさしい内容から授業を始める。TAを使っている。
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