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北海道大学高等教育研究部

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研究部ノート

これまでの研究紹介と今後の展望(田中孝平)

高等教育研究部 助教 田中孝平

はじめまして、2024年4月より高等教育研究部に着任しました田中孝平です。私の専門分野は大学教育学です。大学教育学の中でも、特に私は「高大接続」、「高校から大学への移行」に関心をもって研究を進めています。

わが国の教育システムでは、大学入学者選抜が特に大きな影響力をもっており、高校、大学、社会の至る所でその影響力の強さを垣間見ることができます。私もその影響力の強さを感じた一人でした。私の場合、大学入学直後、学びの機会が大幅に減少した自身や友人を見て、「高校で大学入学者選抜のために受験勉強へ必死に取り組んでいたにもかかわらず、大学に入ると学びをやめてしまうのはなぜか?」という疑問を抱いたのでした。そのため、大学1・2年の頃は、大学生活を謳歌しながらも、一方では学んでいない自分自身や他者に疑問や危機感をもち、大学論や大学の歴史に関する書籍を読み漁って、「大学で学ぶ意義とは何か」や「大学とは一体何をするところなのか」といった問いを一人で考え込んだ苦しい時期でもありました。

このような問題意識を土台として、大学3年になると大学教育学を専門とするゼミに所属し、「どのようにすれば学習者は高校から大学にかけて主体的に学ぶことを継続できるのか?」という問いに卒業論文では取り組みました。研究の結果、仮説として浮かび上がってきたのが、自ら問いを立て、自らの問いへの答えを導く探究学習の経験でした。そこで、それ以降の修士論文・博士論文では、高校における探究学習に焦点をあわせ、「高校で探究学習に取り組んだ学習者が、高校から大学への移行をどのように経験するのか?」という問いについてインタビュー調査をもとに解明しました。

一方、一連の研究を遂行する過程で、高校と大学の学びを単に連続的につないで、高校から大学への移行を「円滑に」することを目指すだけでよいのか、それは高校から大学への移行を経験する際にみられるギャップを自身で乗り越えることで得られる成長の機会を奪ってしまうのではないかという対立意見にも巡り合いました。たしかに、私のように「円滑でない」移行の中で疑問に出会ったことで、苦しみながらも自らの考えを深める時間が生まれたと捉えるならば、高校から大学への移行は必ずしも「滑らか」である必要はありません。その一方で、学習意欲の低下などから生じる大学への不適応をきっかけに、自身の意に反して大学を去る決断をする学生もいます。このような現状を踏まえ、高校から大学への「円滑な移行」(連続性)を確保しながらも、「円滑でない移行」(非連続性)も活かした高大接続を構築していく必要性を提示してきました。

こうした研究成果の背後には、世界各国の研究者との数多くの対話がありました。今後の研究では、学習面にとどまらず、生活面にも射程を広げ、わが国の学生の移行の様相を包括的に検討するとともに、学生の移行の様相は国際的にどのように位置づけられるのかを積極的に発信していきたいと考えています。国際化を目指す日本有数の研究環境である北海道大学において、発展的な研究ができることの喜びを感じつつ、国際的な共同研究を進展させ、新たな高大接続や移行支援のあり方を探っていければと思っています。

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