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北海道大学高等教育研究部

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活動報告

高等教育国際セミナー「韓国の大学入試改革と高大接続―多面的・総合的評価の実現に向けて―」を開催しました

2025年8月19日(火)、北海道大学情報教育館4階共用多目的教室(2)にて、高等教育国際セミナー「韓国の大学入試改革と高大接続―多面的・総合的評価の実現に向けて―」を開催しました。本セミナーは、北海道大学創基150周年記念事業の一つとして位置づけられており、大学教員、入試実務担当者、研究者、大学院生など計14名(うち2名は資料共有のみ)が参加しました。

セミナーでは、基調講演者として韓国建国大学教授(北海道大学客員教授)のJANG Deok-Ho先生をお迎えし、「韓国におけるホリスティックな入試(学生簿総合選考)と入学査定官の役割の進化:入試改革に対する大学の対応」についてご講演いただきました。基調講演では、韓国の大学入試制度の歴史的変遷について概説いただくとともに、2002年の大学入試改革による選抜方式の多様化、2007年に導入された入学査定官制度(Admissions Officer System)とその後の学生簿総合選考の展開、2022年の改革における透明性確保の取り組み、そして2025年に全国的に導入された高校単位制及び2028年入試改革の方向性について詳しく解説していただきました。特に、生徒の多面的な能力・資質を評価するための入学査定官制度の役割や課題、大学レベルでの戦略的対応、そして今後の改善の方向性が具体的に示されました。

続いて、文部科学省/国立教育政策研究所フェローの田中光晴先生を指定討論者としてお迎えし、学生簿総合選考及び入学査定官制度を中心に、公教育の責任範囲を前提とした公平性の考え方、少子化と地方大学への影響、新政権下での政策動向などについて論点を整理していただきました。その後のパネルディスカッションでは、田中先生にご提示いただいた論点についてJang教授から詳細な説明がありました。

以上を踏まえ、質疑応答では、入学査定官の経歴に関する質問、社会(企業)の学歴信仰の問題と入試改革の効果に関する質問、日本の内申書の問題に照らした学生簿の信頼性に関する質問がありました。これらの質問に対して、必ずしも高校現場の知識がある者が入学査定官となるわけではないが、任用後所定の期間訓練を積むことによって専門性を高める仕組みがあること、近年は学歴や学閥よりも「何ができるのか」を採用選考で重視する傾向が強まりつつあるため多面的評価に基づく入試に一定の意味があること、従来は多様な情報が記載された学生簿を高い専門性をもつ入学査定官が精査することで多面的評価を行ってきたが、不祥事を契機に記載事項が制限され、結果的にGPA偏重となっていることについて回答いただきました。

本セミナーは、韓国の大学入試制度改革と大学の対応、とりわけ学生簿総合選考や入学査定官制度に関する知見を広く共有することで、日本の大学入試の課題や可能性を考えるうえでの重要な視座を得る機会となりました。

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